雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「……一つ、聞いていい?」
叔母が俺を見上げる。
「あなた、学生の頃まで、そんな風に誰かに執着することなんてなかったじゃない。一人の人と向き合ってお付き合いしていた気配もなかった。なのに、なぜ……」
そう疑問に思うのも無理はないか――。
「それは、雪野だったから、だな。それまで、女なんて誰だって良かったのに、今の俺は――」
ニヤリと口角を上げて叔母に言った。
「雪野にしか欲情しない」
「な……っ! なんてはしたないことを!」
叔母が口に手を当てて、顔をしかめる。
「だから、他の女と結婚なんて出来るはずもないでしょう。じゃあ、失礼します」
最後だけは丁寧に頭を下げて、居間を後にしようとした。
「……そんなにまでも雪野さんに執着するのは、雪野さんがあなたの本当の母親になんとなく似ているから?」
背後から聞こえる叔母の声に立ち止まる。
「もしそうなら、雪野さんに勝てる人がいるはずもないわね」
溜息交じりのその言葉に俺は振り返った。
「俺にとって、理由なんてもうどうでもいいことだ。雪野しか考えられないし、今じゃ、雪野以外の女は皆かかしと同じだ」
確かに、初めて会った日、母親の面影を雪野に見た。
でもそれは、きっかけに過ぎない。
雪野を知れば知るほど、そのすべてが愛おしくて大切なものになった。その存在自体が、雪野を想う理由だ。
「ふっ――」
叔母が突然俯くと、何を思ったのか笑い出した。
「……本当に、創介には敵わないわね。もう、勝手になさい」
そして、諦めたように呆れるように、叔母が溜息まじりにそう言った。
早く、雪野の元に帰ろう。あの優しくはにかむような笑顔を、早く見たい。