雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「俺も手伝おう」
着替えた後、キッチンに立つ雪野の隣に立つ。
「い、いえっ! 創介さんは仕事をして来たんですから、ゆっくり休んでいて」
驚いたように、雪野が声を張り上げた。それは、絶対やめてくれと言わんばかりの勢いで、俺も少し意地になる。
「別に、そんなに疲れてもいない。ただ待っていても退屈なだけだ」
「でも、創介さんが台所に立つなんて――」
確かに、あまり料理はして来なかった。正直に言うと、料理はまったくできない。
「なんだよ。俺が台所に立ったらおかしいのか? この先、男だって料理の一つも出来ないと妻に愛想をつかされると、誰かから聞いたぞ。おまえも、今からちゃんと俺を教育しておけ。何もできない夫にするつもりか?」
「でも――」
「分かった。言い方を変えよう。俺に料理を教えてくれ。俺からのお願いだ。どうだ? 料理が出来ても損はないだろう?」
こう言えば、ダメだとは言えないはずだ。雪野が困ったように考え込んでから、「分かりました」とようやく言った。
”雪野に愛想を尽かされる”
なんて恐ろしい響きだ。考えただけで身震いがする。
「じゃあ、まずは野菜を切ってみましょう」
「よし」
包丁など握ったこともないかもしれない。
「ちょっと、待って! 創介さん、そんな持ち方じゃ危ないです」
「え? これ以外にどんな持ち方がある?」
「包丁は握りしめて持つものじゃないです」
始めた矢先に雪野の声が飛んでくる。すぐ隣にいる雪野が俺の手を止めた。