雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
結局、材料すべての野菜の皮をむきちょうど良い形に切るという作業だけに、一時間もかけてしまった。
「余計に手間をかけさせて、悪かったな……」
四時過ぎから始めたはずなのに、こうして食卓に料理を並べた頃には七時になろうとしていた。
「そんなこといいんです。創介さん、ものすごく頑張りましたよ。最後はほら、ちゃんと材料の野菜、全部切れたでしょう?」
向かいに座る雪野が、必死に俺を励まそうとする。
器に盛られた肉じゃがは、確かに俺が切ったじゃがいもが入っている。でも、それは、あまりに不格好な形で。そのうえ大きさもばらばらだ。
「少しずつ上達するよう努力するから。これに懲りずに、また教えてくれ」
「もちろんです!」
雪野が満面の笑みで答えてくれた。
「形も、見方を変えればいろいろで面白いですし。形と味は関係ないですから」
「――そうだな」
結局のところ、こうして雪野と一緒に何かをするということが嬉しいのだ。
無駄に時間がかかってしまったのに、料理をしていた間、雪野はどこか楽しそうで。そんな雪野を見ているのもまた嬉しい。
「いつもより、美味しいです」
俺の目の前で嬉しそうに食べる雪野に、不意に胸が詰まる。
こんなに、俺の前で嬉しそうに、そして楽しそうにしてくれる。それなのに、雪野は一度、俺から離れて行こうとした。この家を飛び出した。
もう、あんなことさせたくない。
「――雪野」
「なんですか?」
俺は箸を置いて、笑顔の雪野を見つめた。
「今日、仕事の後、叔母のところに行って来た」
「……え?」
雪野の顔から、笑みが引いて行く。
「きちんと話をして来た。もうおまえに余計なことを言って来るようなことはないと思うが、もしまた何か言って来たら、俺に必ず言ってくれ」
「話って……」
雪野が複雑な表情で俺をうかがうように見て来た。
「俺の気持ちは揺るぎない。何を言っても無意味だってな。俺のいないところで卑怯なことをしないように釘を刺しておいた。それに、神原にも何か言われていたんだろう?」
「神原さん……?」
雪野が目を見開く。雪野は神原とのことも一切俺に言わなかった。
「神原におまえの身に起きたことを調べさせた時、本人が俺に言って来た」
「神原さんが?」
雪野の目がゆらゆらと揺れて、俺から視線を逸らす。そんな表情をするのは、何を考えているからか。
「叔母にしても神原にしても、雪野に辛い思いをさせたな。改めて俺からも謝るよ」
「創介さん、やめて」
謝る俺に、雪野が静かに声を放った。そして、その目は、先ほどと違って真っ直ぐな目だった。
「謝ったりしないで」
雪野がきっぱりと言う。