雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「ごめんね」
「いや、俺が悪かった。雪野も呆れただろう?」
もう苦笑するしかなくて、そう雪野に言った。
「ううん。私の方こそ、ちゃんと話も聞かずに勝手にはしゃいじゃって、ごめんなさい」
俺の肩に雪野が頭をもたれさせる。そして、そっと俺の腕に触れた。
「創介さんが、私が言ったことを覚えていてくれて嬉しいです」
雪野の腕が俺の腕に回されて、そこに雪野が身体を寄せる。
「……そうか」
慰められてる――?
そう思えばまた、複雑な感情になるけれど、雪野の温もりを感じて少し安堵もする。
「うん。凄く、嬉しい」
「確かに、あの象を見たおまえは、本当に嬉しそうだった。雪野を笑顔にできたんだから、部下に感謝しないとな……」
雪野のことになると、それも男が絡むと、まともな思考が出来なくなる。落ち着いて考えれば、感謝こそすれ嫉妬するところじゃないと分かるのに。
雪野が触れてくれている方とは反対の腕をあげ、雪野の髪を撫でた。雪野が俺の腕に寄せていた顔を上げる。
「そうすけ、さん……」
「ん?」
間近にある雪野の顔。その唇が、俺の名前を呼ぶ形に動く。見上げる目に、熱が灯る。
「――キス、したい。いい、ですか?」
「……え?」
雪野の目を見下ろせば、微かに潤んで見えて。
普段の雪野とは違う、女の表情――。
「雪野――」
俺がぽかんとしているうちに雪野が俺の唇に触れて、そしてあっという間に離れて行った。
また雪野は俺の腕に腕を絡ませ、頬を寄せている。だから、もうその表情を見ることはできない。
「雪野……」
「はい」
「顔を上げろ」
俯いていた雪野が、おそるおそると顔を上げる。自分からキスして来たくせに、その顔は酷く恥ずかしそうで。見下ろした雪野の頬に、手のひらで触れる。
「――そんな、触れるだけのキスで良かったのか?」
ゆっくりと頬を撫で、伸ばした指の先で耳たぶに触れる。視線を雪野の唇に移すと、その先に、雪野のパジャマの襟元が視界に入る。
襟元から覗き見る胸元の辺りに、前の日の痕跡がまだ鮮明に残っていた。
よく見れば、胸元だけじゃない。鎖骨のあたりにも、首元にも――。
昨晩の行為の余韻が淫靡に浮かび、雪野に引き寄せられる。
「――もう一度、する?」
既に掠れている自分の声に、まだもう一人の俺が自制しろと訴える。
なのに――。
俺に頬を捕らえられて、顔を逸らせない雪野が、薄く唇を開ける。その表情があまりに煽情的で、抑えられない。吸い寄せられるように唇を近付ける。
「……して」
雪野が漏らした吐息のような声を聞けば、噛みつくように唇を重ねていた。