雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

 いろんな思いが駆け巡っていた私の手の甲に、創介さんが手のひらを重ねた。

「雪野」

数メートル行けばパーティー会場の受付がある。そこにある人だかりから少し距離があるこの場所で、創介さんが私に向き合うように立った。

「これから行く場所には、雪野のことを良く思っていない人間もいる。おまえという人間を知りもしないで、ただどんな家の生まれかだけで判断する奴もいる。あからさまな視線に晒されるかもしれない」

創介さんの真剣な眼差しが、ただ私の目一点に注がれる。

「でも、どんな目で見られても、誰に何を言われても、絶対に自分を卑下するな」

創介さんの目から視線を逸らせなかった。

「自分を卑下するということは、雪野を必死に育てて来たお母さんを卑下することになる。おまえを選んだ俺を否定することになる」
「創介さん……っ」

創介さんの言葉に、私はハッとした。

――お母さんと創介さんを、否定することになる。

そんなこと、考えもしなかった。

 自分の至らなさばかりに目が向いて、私という人間を育てた母と、そして選んでくれた創介さんの思いを否定することになっていたことにも気付けないでいた。

「おまえに恥じる点なんて一点もない。亡くなった父親からも、一人で育てて来てくれた母親からもたくさんの愛情を注がれてここにいる。それに、雪野は自分にできることを精一杯頑張って生きて来た。そんなおまえを誰が見下せるという?」

創介さんの言葉が、私の不完全な心を埋めて行くように染み渡る。

「おまえは誰の妻だ?」

真っ直ぐに私を見つめる目を、今度はしっかりと見つめ返した。

「あなたの――、榊創介の妻です」

私がはっきりとそう答えると、創介さんが満足そうに笑った。

「そうだ。俺が選んだ、俺の妻だ。そのことを忘れるな」

創介さんがもう一度私の腕をしっかりと自分の腕に絡めさせた。

「さあ、戦闘開始だ」
「はい」

真っ直ぐに前を見据えた。

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