雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「山岸副社長、先日はありがとうございました。奥様も、お変わりありませんか?」

創介さんがそのご夫妻の前に立ち、声を掛けた。

「創介君じゃないか」
「お久しぶりね。お元気?」

副社長も奥様も、笑顔で創介さんに応える。

「おかげさまで、変わりなくしています。結婚したことで、新たな気持ちで仕事に励めています」

そう言って私に視線を寄せた。

「おお、雪野さんか。結婚式のあと、挨拶に来てくれたね。その時以来かな」
「あら、創介さんの奥様?」

ご夫婦そろって私にも笑顔を向けてくれる。
副社長の奥様はあの幹部会にはいらしていなかったから、顔を合わせるのは初めてのことだ。

「先日は式にご出席くださりありがとうございました」と山岸副社長にお礼をしてから、奥様に身体を向けた。

栗林専務の奥様や竹中常務の奥様と同じ、幹部の奥様だ。

どう私を見るのか――嫌な緊張が走るが、そんな気持ちは心の中だけに隠し、姿勢をピンとする。そして、目一杯の笑顔で奥様を見つめた。

「初めまして、妻の雪野です。よろしくお願い致します」

なんとか笑顔を崩さずに頭を下げる。

「こちらこそ、よろしくお願いしますね。お二人並んだ姿、とってもお似合いよ? 創介さん、良かったですね。こんなに素敵な方を奥様にすることが出来て」

――お似合い。

初めて言われた言葉だ。

「本当に。心からそう思ってます」

創介さんが私を見つめながら言った言葉に、お二人が声を上げて笑った。

「こうもはっきり肯定されると、こちらが照れるな。いい伴侶をもらったんだ。君もいつまでも隠れている場合じゃない。早くこっちに戻って来ないとな」
「分かっています。早く社長に認めてもらえるように、最善を尽くします」

創介さんがそう答えた後、奥様が私に視線を戻した。

< 199 / 380 >

この作品をシェア

pagetop