雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

 一瞬、この状況を忘れ、胸が一杯になる。
 
 横たわる沈黙のあと、副社長の奥様が呟いた。

「調べる……ね。創介さんのお気持ち、よくわかったわ。私も仲良くさせてもらっている奥様たちに、少し聞いてみましょう――」
「調べるだなんて大袈裟な。そんな必要ないですよ!」

焦ったように、栗林専務の奥様が声を上げた。

「大袈裟? 私にとっては何があったか事実を知ることはとても重要なことだ。それとも――」

創介さんの鋭く低い声と、射抜くような視線に私までびくつく。

「調べられては困るようなことでもあるのですか?」

その視線に、栗林専務の奥様が怯えたように表情を強張らせた。

「い、いえ、別にそういうわけではありません。そんなお手間をお掛けしたくないというだけで」

創介さんは、栗林専務の奥様が本当の事情を話せないだろうと分かっている。

分かっていて、言わせようとしている――。

「あ、ああ……そうだわ。もしかしたら、会合の準備をお手伝いできなかったことを言っているのではないかしら? 雪野さん、そんなことならもう気になさる必要はないのよ? 次から気を付けていただければいいんだから」

引きつった笑顔を浮かべながら栗林専務の奥様が私を見つめる。その奥様の視線に、どう答えるべきなのか分からずにいると、副社長の奥様が問い質した。

「栗林さん。幹部婦人の会合について、雪野さんに事前にきちんと説明はされたのかしら?」
「それはもちろん、案内状をお送りして――」
「そう言えば、会合の案内状はいつ発送されたのでしょうか? かなり直前にこちらに届いたようなのですが」

またも、栗林専務の奥様の言葉を創介さんは遮った。

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