雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
創介さんは、奥様を追い詰めようとしている。最初から、申し訳ないともお詫びをしたいなどとも思っていないのだ。
私が苦しんだ分の報いを、与えようとしているのか――。
「どうしてそんなに直前まで、会合のことについてお知らせいただけなかったのですか?」
創介さんの栗林専務の奥様に対する詰問に、私は思わず創介さんの腕を掴んだ。
「それはどういうこと? 初めて参加する時、どれだけ緊張するかどれだけ不安なのか、栗林さんにも経験があるのだから分かりますよね? ましてや、雪野さんはまだお若いのだからなおさらよ。親身になってあげてもよかったのでは?」
副社長の奥様は、決してきつい口調ではなく、それは諭すような話し方だった。でも、その話の内容こそが栗林専務の奥様を責めている。
「それは――」
「もしかして、私の妻が疎ましいから……ですか?」
「創介さんっ」
咄嗟に声を上げてしまう。
「まさかっ!」
でも、その声にかぶさるように栗林専務の奥様の叫びにも似た声が発せられた。苦虫を噛み潰したような表情で、創介さんを見ている。
「香代、おまえは一体、榊君の奥さんに何をしたんだ?」
「私は、ただ――」
栗林専務がまるで叱責するかのように、奥様に問い掛けた。
この状況に、ひやひやとして生きた心地がしない。私が、自分一人の力で対処できていれば、こんな状況を作らずに済んだのかもしれない。
何か上手く場を収める言葉はないだろうか。そう必死で頭をフル回転させている時だった。
「――社長」
副社長の声に、その場にいた全員がその先に視線を向けた。創介さんのお父様が現れて、一瞬にしてこの場に緊張感が走る。