雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「――では、失礼する。
創介、新しい経団連会長の小暮さんに紹介するから、あとで来なさい」

お父様がこの場にいる皆に視線を寄越した後に、創介さんにその視線を向けた。

「承知いたしました、社長」

親と子であると同時に上司と部下でもあるのだ。

お母様を伴ってお父様がこの場から立ち去る際に、皆がもう一度頭を下げた。お父様は、丸菱グループの社長なのだと改めて思い知る。

「――私の不安が杞憂に終わって、本当に良かった。もしかしたら、雪野は、皆様に受け入れてもらえていないのではないかと不安でたまらなかったんです。雪野はごく普通の家の人間ですからね」

お父様が立ち去った後に、創介さんが突然そんなことを言い出した。

「丸菱幹部の奥様ともあろう方々が、家柄のみで人を判断するような浅はかなことはしないと思っていましたが、雪野が落ち込む姿を見ていたら急に心配になりまして。
でも、雪野を助けてくださると、今、はっきりとおっしゃっていただけましたから、本当に安心しました」

創介さんは、滅多に見せないにこやかな笑顔を栗林専務の奥様に向けた。

「――奥様」
「は、はい」

創介さんがその笑みを消して、低い声を放つ。

「私は、雪野を妻にしたいと願い続けてこうして妻にすることができました。雪野の代わりになる人間はいませんし、本来なら違う人間がこの立場にいるはずだったなどということもありません。それだけは、ご理解ください」

奥様に言われた言葉を思い出す。

『あなたはもう少しご自分の立場を考えた方がよろしいわ。そして、本来その立場にいるはずだった人がいる、ということを』

創介さんは、そのことを知って――。

そして、あの宮川凛子さんに助けられた講演会でのことも。

「雪野は私が選んだ妻です。今後もし、雪野が何か失礼をしましたら、私にもお伝えくださいますか? 私が責任をもってしっかりと言い聞かせ対処致しますので。よろしくお願いします」

栗林専務の奥様は、創介さんから視線を逸らした。

「――というわけで、雪野をお仲間に入れていただけるよう、今度、皆様をご招待してしっかりおもてなしするように社長から言われております。いらしていただけますか?」

お父様が……?


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