雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「もちろん、そのつもりですよ。私も、もっと雪野さんとゆっくりお話してみたいわ」
副社長の奥様が私に微笑みかける。
「他の方からは、出席のお返事をいただけているな、神原」
「はい。皆様から、内々に出席のお返事が来ております」
神原さん――?
いつの間にここに来ていたのか、一礼して、神原さんが手帳を片手に説明を始めた。
「来月末の日曜日、社長宅を予定しております。詳しいご案内は既に発送させていただきました」
「一か月以上先のことですから、直前ということもありません。栗林専務ご夫妻もご出席いただけますね?」
神原さんの説明の後に、創介さんが念を押すように言う。
「社長からのご招待です。もちろん、出席させていただきます」
奥様が声を発するよりも前に栗林専務が声を上げた。
「それはよかった。では、竹中常務ご夫妻ともお誘い合わせのうえ、ぜひいらしてください。お待ちしております」
再び創介さんが余裕のある笑みを浮かべる。
「それから――。当日は、時間通りにお越しください。私と雪野とで皆様をおもてなしすることが目的ですから、お手伝いいただく必要はありません。なあ、雪野」
創介さんが私に目配せをして微笑む。その意図をはっきりと理解する。
「はい。精一杯おもてなしさせていただきます!」
私がこの世界で生きていくための場を、創介さんが準備してくれたのだ。じんとして、胸がいっぱいになる。
「では、楽しみにしていますよ」
「社長宅にうかがえるなんて、良かったな。滅多にないことだぞ」
副社長ご夫妻が笑い合う。
「お待ちしております」
それに創介さんが笑顔で答えた。
「じゃあ、また」
「こんなところでお時間取らせてしまって申し訳ございませんでした」
にこやかな副社長ご夫妻と複雑な表情を浮かべた栗林専務ご夫妻を、私と創介さんとで見送った。