雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「一瞬分からなかったけど……よくよく見てみたら、本当にあの時の子だね」
「服装と身に着けているもので、ここまで化けるんだ」
「本当に、あの時の子が創介さんの奥さんになったなんて……」
ニ人がニ人とも私を凝視する。パーティーの出席者だろうか。美しいドレスを身にまとっていた。私は知らないのに、私のことを知られている。それが、なんとなく気持ちが悪い。
「すみません、どちらさまで――」
「創介さんが結婚したのは知っていたけど、その相手があの時の子だってユリに聞いて。信じられなくて……。でも、本当だったんだ」
ユリさん――?
ということは、もしかして……。
創介さんと出会ったあの日、あのマンションの部屋にいた人たちということか。
「なんかもう、言葉にならない」
一人が、そう言ったきり、ただ黙ったまま私をじっと射抜くように見つめる。向けられるあからさまな視線が痛い。
「――バカみたい」
別の女性が、ふっと息を吐くと乾いた笑い声をあげた。
「創介さんが、釣り合わない家の人と結婚したって噂では聞いていたけど、まさかあの時の子だったなんて。もう、笑えてくるわ」
「そりゃあ、ユリも悔しいよね。数合わせで、それも、ちゃんと自分より見劣る人を連れて来たのに、こんな結末じゃあ」
そう言って、二人が顔を見合わせる。そしてその表情を険しいものに変えて私を見た。
「創介さんに近付くためにどれだけの努力をしたか。創介さんの目に留まるために、外見を磨いて着る服に気を使って、いろんな伝手を使っては創介さんがいる場所に何度も通って――。それで、やっと一夜の相手になれて。でも、その先はなかった。なのに――」
綺麗にグロスで彩られた唇が歪む。
「あんな……着る服も見た目も、何もかも。何も気を使っていない、ただ、あの場に連れて来られただけの人がね。ホント、バカみたいだわ」
――あなたが踏み台にしてきた女の子たち、みんながあなたを見てる。その目がどんなものか、言わなくても分かるよね?
ユリさんはそう言っていた。ユリさんがこの人たちに私だと告げたのかもしれない。
「――そんな風に黙ってるけど、本当は、心の中でほくそ笑んでるんでしょ?」
歪んだ表情が私に一歩近づく。
ユリさんとばったり出くわした時、あの時は、ただ逃げ出したかったのを必死に耐えていた。返す言葉なんて何もなくて、ただじっと。
返す言葉なんてない――。
それは今も同じだ。でも、もう私はただじっと耐えているだけなんかじゃない。言葉は返さなくても、気持ちは逃げたりしない。真っ直ぐに目の前の女性たちを見つめた。
それで、いい――。
”おまえは、誰の妻だ?”
創介さんの言葉が蘇る。私は、創介さんの妻だ。私が何かを言う必要なんてない。
「何とか言ったらどうなの――」
「ちょっと、ちょっと、君たち、なにしてんのー」
張り詰めた空気と相反するような軽い口調の声が飛び込んで来た。