雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「木村さん……っ」

ニ人のうちの一人が、声を漏らす。現れたのは、創介さんの友人の木村さんだった。

「誰かと思ったら雪野ちゃんだ。今日はまた、美しい! 見違えたよ――で? どうしたの? みんなして神妙な顔して」

私に満面の笑みを向けたかと思ったら、木村さんがニ人の女性の顔を順に覗き込んだ。

「い、いえ、別に。久しぶりに戸川さんにお会いしたので、ちょっと挨拶をしていただけで――」
「挨拶? 君ら挨拶するほどの知り合いじゃないでしょう? ましてや、楽しい気分で昔を懐かしむような関係でもない。だよね?」

木村さんの口調は一貫して変わらない。

「はたから見たら、ニ人で一人の女の子を苛めているように見えちゃうぞー。君たちせっかく綺麗なのに、全部台無しになっちゃうじゃない。それに――」

そう言ったところで、木村さんの目が変わる。振り撒いていた笑顔が真顔になった。

「こんなところ創介に見つかったら大変だよ。あの男、雪野ちゃんのことになると恐ろしさ100倍になるからねぇ。女の子でも容赦ないと思うよ?」

でも、結局、彼女たちにニコっと笑顔を向ける。と思えば、突然どこかに視線を向けて声を上げた。

「あっ、創介だ。こっちに来る!」
「わ、私たちは、これで。じゃあね、戸川さん」

木村さんの一声で、ニ人の女性たちは立ち去って行った。

「ふーっ」

その背中を見送りながら、木村さんが大きく息を吐いた。

「……ったく。創介も一緒に来てること分かってるはずなのに、君を見たら何かを言わずにいられなくなっちゃったのかな……。雪野ちゃん、大丈夫? 嫌なこと言われたでしょ?」

ひとり言のように呟くと、私の表情をうかがうような視線を向けた。

「いえ。大丈夫です。ありがとうございます」

笑顔でそう答える。

「つくづく思い知らされるよ。若気の至りって言っても、してきたことは消えるわけじゃないから。自棄になってバカやってた頃の代償はこういところに来るんだなぁ、なーんて」

壁際に立つ私の隣に木村さんも背中を預けて呟いた。

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