雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――雪野」
そんな木村さんの姿を見送っていると、少しかしこまった創介さんの声が聞こえた。
「俺はこのとおり、おまえのことになると途端に大人げなくなる。心の中では『不安に打ち勝ちたい』と思っているのに、結局、それもまだうまくいっていないみたいだ」
私の手のひらを包み両手で包み込んで、一つ一つ、言葉をくれる。
「でも、努力して行こうと思ってる。大きな気持ちで雪野を包み込めるようになるまで、もう少し、時間をくれるか……?」
「あたりまえです。一緒に成長して行けばいいって、創介さんが言ってくれたんじゃないですか」
包み込まれた私の手が温かくなる。
「……そうだな。でも――」
包み込む創介さんの手に力が込められる。
「雪野を困らせてしまうとしても、それは全部、おまえを想っているから。それだけは、分かってくれ」
「はい」
創介さんを見上げて頷いた。
「よし。じゃあ、父のところに行くか。経団連の会長だかなんだか知らないが、俺にとっては木村よりよっぽど安全な人間だ。
それにしても、あいつのおまえに対する距離感は、おかしくないか?」
「まだ、そんなこと言っているんですか? 今、反省したばかりじゃないですか」
まだぶつぶつと言う創介さんに思わず笑ってしまう。
「雪野が、あまりに可愛すぎるから悪い」
「ひ、開き直りましたね……っ」
そんな顔で、そんなことを言って。
いつも険しい表情をしている人の緩んだ目は、それだけで凄い威力で。
「ほら、行くぞ」
そう言って、私の手を握りしめてくれた。
その手のひらが、私を導く。
大好きな人。
そして、この先ずっと一緒にいる人――。
そう思うだけで幸せを感じる。