雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
出勤する前に、雪野の病室を訪れた。その時には、雪野はもうすべての支度を終えていた。
「迎えに来てくれてありがとう。一人でも帰れたのに――」
俺を見た瞬間に、ベッドに腰掛けていた雪野が立ち上がった。
「何言ってるんだ。迎えに来るくらいどうということもない。雪野を家まで送り届けたら、それから出勤する予定だけど、一人で大丈夫か?」
雪野の腰を支えて病室を出る。
「うん。大丈夫です」
看護師と担当医に挨拶をすませた後、会計をしてから病院を出た。そして、雪野を車に乗せる。
「何かあったらすぐに俺のスマホに電話しろ。仕事中も着信には気付くようにしておくから。些細なことでも、躊躇いなく連絡しろよ」
ハンドルを握りながら雪野にそう告げる。
「はい」
助手席に座る雪野は、窓の外を眺めていた。その横顔を盗み見る。
昨日よりは、幾分顔色もいいか――。
「――これから出産までの病院を決めないといけないな。ここの病院にそのまま通うか? もう少し近い場所の方がいいか」
万が一の状況になってもすぐに対処できる、設備も医師も整った病院がいいはずだ。病院選びも、慎重にしないと。そう思い言葉にした。でも、雪野からは返事はなかった。
「雪野?」
「えっ? 何ですか?」
慌てて俺の方へと顔を向ける。
何か考え事か――?
「――いや。これからのこと、決めて行こうか」
俺が改めてそう言うと、一瞬雪野がその目を揺らめかせた。
「はい」
でも、それは本当に一瞬のことで、雪野はすぐに顔を窓へと戻してまった。