雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
雪野がかかることにした病院の、最初の検診の日に同行した。調べ尽した末に決めた産婦人科だ。
これから特に気を付けること。どんなリスクがあるのか、そのリスクを軽減するためにどういう選択肢があるのか。そういったことをより詳細に医師と話せたことで、俺の不安もだいぶ和らいだ。
「ねぇ、創介さん」
「ん? なんだ?」
その帰りの車の中でのことだった。
「赤ちゃんが出来たこと、お母さん、大喜びなの」
「そうか。今度、二人でまた狛江の家に顔を見せに行こう。そうしたら、お義母さんも安心するだろう」
「うん。それで、創介さんは、お父様や家族に報告した……?」
雪野の問いかけに、思わず雪野の方を見る。
「ああ……。そう言えば、まだだったな。俺の方から知らせよう」
雪野が倒れたことで、何より自分がその現実を受け止められていなくて。報告しようなんていう発想にすらなっていなかった。
孫なんて存在が出来ると知ったら、あの父でさえ表情を崩すのだろうか。
そう想像して苦笑しそうになるが、すぐにまた違う思いも浮かぶ。その子が男の子でも女の子でも、また俺のように”榊”の名を背負って生きて行くことになるのだろうか。息苦しい世界で育って行くことを思うと、複雑な心境になる。
とは言え、父にしても祖父母にしても、孫が出来て嬉しくないわけがない。それに、俺たちの育て方で何とでもなる。
「口にはしないだけで、早く孫がほしいなんて思っているかもしれないしな」
「そうですね! 創介さんの実家にも行こうね」
そう言った雪野の表情は、パッと明るくなった。ここ数日見ていない心からの笑顔だ。突然、元気になった雪野を不思議に思いつつ、安堵もした。
こんな風に、言葉一つで雪野を笑顔に出来たのに――。