雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
タクシーに飛び乗り、告げられた病院へと向かう。そこは、雪野がかかっている産婦人科だった。信号待ちにじりじりとした気持ちになりながら、雪野の顔ばかりが蘇る。
『すごく嬉しくて。創介さんと私の赤ちゃん、早くほしいなって思っていたから』
妊娠が分かったその日の雪野の笑顔。あれが雪野の本物の笑顔。その笑顔がすぐに目に浮かび、砕けて粉々になった。
病院に着いて、受付で雪野の名を告げるとすぐに病室を教えてくれた。つい先日も、同じことをした。でもその時は、子供が出来たと知った日だった。
「――雪野」
病室の扉を開けて真っ先に飛び込んで来たのは、継母――あの人の姿だった。
「雪野は……っ」
明るい陽が差し込む個室の部屋のベッドに、雪野が横たわっている。
「今、やっと落ち着いて眠ったところです。とりあえず、主治医のところに行ってください」
病室で目を閉じて眠る姿はあの日と同じはずなのに、雪野の表情は全然違うものだった。目を閉じているのに、苦しそうに眉をしかめて。そして、髪が乱れていた。
「どうして、あなたが――」
「詳しいことは後で。とりあえず早く話を聞いて来たほうがいいと思います」
淡々と吐かれる声。あの人は、雪野のベッドから離れた壁際のソファに座っていた。
「はい」
俺は、言われる通り、この前も診察をしてくれた医師の元へと向かった。