雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
少しして、扉が開いた。病室から廊下へと出たあの人が俺に気付き、一瞬目を逸らす。けれど、扉を閉めた後に俺に向き合った。
「流産したと知った時、いつもの雪野さんでは考えられないほどに取り乱していた。『赤ちゃんは助けて』って。『ごめんなさい』って。だから、傍についていてあげてください」
そう言い終えると、小さく頭を下げ、俺の前から立ち去ろうとした。
「今日は世話になりました。ありがとうございます」
その背中に咄嗟に声を掛ける。もう一度会釈をして、あの人は帰って行った。
雪野の元へと行くために、病室へと足を踏み入れる。俺に背を向けるように横たわっていた。その肩が震えている。
「……雪野」
そっとその肩に触れようとした時、その身体が強張ったのに気付いて手が止まる。
「ごめんなさい。創介さんとの赤ちゃん、消えてしまったって。本当にごめんなさい。私が、もっとちゃんと気を付けていれば」
「雪野のせいじゃない。先生もそう言っていた。仕方がないことだって。自分を責めるな」
こちらに振り向いた雪野の震える声と肩が痛々しくて、思わずその肩を掴んでいた。
「俺には、雪野が無事でいてくれたことの方が大事なことだ――」
そう言った時、雪野が身体を起こし俺の方へと顔を向けた。その顔は、涙で濡れて。目は真っ赤で。そして、俺を睨むように見ていた。