雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「どうしてそんなこと言うの? 赤ちゃんのことは?」
その目は、哀しみと、そして怒りに満ちていた。
「私には、大事な赤ちゃんでした。私なんかどうなってもいいっていうくらい。だって、創介さんとの赤ちゃんだから。でも、創介さんには違った。そうだよね?」
「雪野……」
その怒りに戸惑う。雪野が俺の手を振り払った。
「赤ちゃんが出来たって聞いてから、創介さんは一度も笑ってくれなかった。一度も『嬉しい』とか『よかった』って言いませんでした」
「雪野、俺は――」
「私、寂しかった。でも、きっと、創介さんなりに喜んでくれているって言い聞かせていました。だけど、創介さんは自分の家族の誰にも報告していなかった!」
雪野の身体のことばかり考えていてまだ報告していなかった。
「それは、嬉しくないから。私との赤ちゃん、いらないって本当は思っていたから――」
「違う!」
「じゃあ、どうして? 流産したと知っても、赤ちゃんのことは何も言わなかったよね……?」
雪野が俺から離れるように、ベッドの上で座ったまま後ずさる。
「そんな創介さんに、私の苦しみは分からない。分かるわけないっ!」
悲しい叫びが俺の胸を貫いた。何も反論できなかった。
俺に、何が言える――?
雪野に子供が出来たと知った日から、一度も雪野と喜びを分かち合っていない。そこに触れることもしなかった。ついさっきだって。雪野が無事ならそれでいいと思ったはずだ。
雪野さえいればって、そんな風に――。
何も分かっていなかった。
自分の不安に溺れて、雪野を見ていなかった。
雪野が青ざめた顔で俺を見上げている。自分で自分の言ったことに驚いているような。でもきっと、それは雪野の心の叫びだった。こらえきれなかった雪野の感情だ。