雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
それから、ほとんど言葉を交わさずに家に帰って来た。
雪野の身体と心が強張っているのが見てとれる。俺が雪野を孤独にしたのだ。そして今も、雪野を孤独にしている。
無言のまま部屋に入る。
「創介さん……」
俺の後ろに付いて来た雪野が俺を呼んだ。
「ん?」
きっと、俺が触れることも言葉を掛けることも、雪野は望んでいない。
「さっきはすみません。私、どうかしてるみたい。全然心の整理が出来ていなくて。だから、私、創介さんに酷いことを言ってしまいそうで……」
雪野の方へと振り向くと雪野は俯いていた。
「いいんだ、何を言っても。何でも、俺に言って――」
「だから、少し、離れていたいの」
雪野の声が俺を立ち竦ませる。
「ごめんなさい……」
結婚して雪野が初めて見せた、俺へのはっきりとした拒絶。目の前にある小さな頭が視界に入る。ところどころ髪がほつれて、疲れ切った姿で。きっと、俺の傍にいたのでは心が休まらないだろう。それが分かるだけに、辛かった。
これまで、何があっても俺の手で癒してやりたいと思って来た。俺の手で苦しみを取り除いて、笑わせてやりたい。そのためなら、なんだってしたいって。そう思ってそうして来たつもりで。でも、今度ばかりは俺ではそうできない。
喜びを分かち合おうとしなかった俺に、
雪野と同じ気持ちで悲しみを分かち合う資格はない――。
「……分かった。家に、帰りたいか?」
雪野が頷く。その姿にまた胸が鋭く痛む。
「そうか。じゃあ、お義母さんに連絡するよ。おまえは準備してろ」
無理矢理にこの顔に笑みを作る。そんな俺がせめてできること。それは、雪野の思うようにさせてやることだ。