雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「創介さんが雪野の妊娠を心から喜べなかったのは、妊娠したことで雪野が倒れたからでしょう? 違う?」
「――そう、です。倒れたと聞いた時、雪野の身体のことしか考えられなかった。もう新しい命がそこにあったのに、目を向けられなかった」
項垂れる俺の腕を、温かい手のひらが慰めるようにぽんぽんと叩いた。
「第三者なら想像できることでも、きっと今の雪野には考えられない。今は失った赤ちゃんのことしか見られないの。女として、そんな雪野の気持ちも理解出来るのよ。女は妊娠したと知った瞬間から母親の気持ちになれる。男の人の何歩も先を行ってしまうからね。でも――」
諭すように俺に言った。
「あなたの愛情は雪野だって分かっているはず。少し離れて冷静になって落ち着いたら、必ずそれを思い出す。だから、あの子のこと待っていてくれるかしら」
「はい」
苦しさと雪野の母親の優しさに、ただただ胸を締め付けられる。
「それと」
俺が頷くとさらに言葉を続けた。
「あなたのそのままの気持ちを雪野に伝えてね。男の人は、自分に責任があると思う時ほど口を閉ざすから。”言い訳にしかならない”なんて思ってね。夫婦なんだから言い訳したっていいのよ。感じたこと思ったこと、全部雪野に言い訳してあげて?」
「……はい」
義母はふっと息を吐いて改めて俺を見つめた。
「今日は、女同士で語り合うから。任せておいて」
「ありがとうございます。よろしく、お願いします」
もう一度深く頭を下げる。
「うん」
そんな俺に優しい声が降って来た。
それから、雪野のいない部屋へと車を走らせた。