雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――失礼いたしました。では、次の質問に行かせていただきます……」
あー、次の質問も厳しいな。これ、本当に聞かなきゃダメか……?
考え込む俺に三井がきつく視線を送って来る。
「す、すみません。えっと、奥様との出会いが、そのホームパーティーではなく職場だったとしても、恋に落ちてご結婚されていたと思いますか?」
言ってる俺でさえ恥ずかしくてたまらないのに、これに真面目に答えなければならない常務は、もっと……。
「……ぶはっ」
「じょ、常務、大丈夫ですかっ?」
さっきの質問だけでも相当疲れたのだろう。テーブルの上のコーヒーを口にしていたところを、それを吐き出しそうになっていた。
「し、失礼。それは、仮定の話か?」
「そ、そうです。”もしも”の話で――」
あーもう、俺じゃないのに、俺のせいみたいになるじゃないか。
「――ああ、まあ。彼女だから結婚したわけであって、どこで出会ったかは関係ないから、そうなっていたんじゃないかな」
「榊常務と、社内恋愛――。たとえば!」
もう出て来た。三井。
「奥様が、榊常務の秘書としていらしたとしたら。もう、お仕事にならないですよね?」
「三井さんっ!」
先ほどより何倍も大きな声の神原さんの声がした。
無理もない。実際の秘書をしている神原さんからしても、非常に微妙な質問だろうよ。
だいたい、『お仕事にならないですよね?』って一体、何を想像しているんだ。妄想。もう、ただの妄想。
「雪野が、秘書――」
じょ、常務……?
なぜか、常務が真剣に考え込んでいる。
そんな質問に真剣に考える必要なんてない!
難しい顔をしていたかと思ったら、榊常務は急にその表情を緩ませて。「いや、それはやっぱり、まずいな」なんてひとり言みたいにぼそぼそと呟いてなんだか照れている。
常務。一体、今、何を想像したんですか――。
「確かに、仕事に支障が出そうだ。それはやめておこう」
十数秒の逡巡のあとの、常務の結論はそれのようだった。
「どうして、仕事に支障が出るんですかぁ? 密室の常務室で奥様と――」
「すみません。次、行きます」
強硬手段として、三井の口を俺の手で塞ぐ。