雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「常務にはインタビューをしたのでお話をいろいろとお聞きすることができたのですが……」
私は右手を高く上げる。酔っ払いのよくやることだ。
「せっかくなので、奥様にも突撃インタビューしてもいいですかっ!」
奥様のいたいけな瞳を、強い強い眼差しで見つめる。瞬き一つせず、真っ直ぐに。
「……え、え?」
「それ、いいな。私も、いろいろ聞いてみたい」
奥様の戸惑いに追い打ちをかけるように、読者さんも私に助け舟を出してくれた。
「いいですか?」
私が念を押すように、奥様に問い掛ける。この時、この場に出席していた、常務以外全員の視線が、奥様一点に向けられた。それに、少しのけぞるようにして、でも「はい」と言ってくださった。
「いえーい!」
読者さんとハイタッチをする。
「で、早速ですが! 常務にお二人の出会いをお聞きしたんです。そうしたら、ホームパーティーのようなものに奥様がいらして、それが初めての出会いだと教えていただきました。それで、常務の方が先に奥様に好意をお持ちになったとお聞きしたのですが、奥様の常務に対する第一印象はどんな感じだったんですか?」
「え……っ?」
「え?」
奥様があまりに戸惑うような声をあげられたので、びっくりして私まで声を上げてしまった。
「えっと……」
奥様の目が揺れている。それは、必死に言葉を探しているみたいな。
先ほどまでの、ただ照れているというのは違うみたいで。困っている。そんな感じだった。
答えづらい質問だったのだろうか――。
ちらりと常務に視線をやっても、常務も常務で困り切ったような表情だ。
それって、つまり、やっぱり言いにくいこと?
余計に、私たち社員は前のめりになる。本当に申し訳ないけど、どうしてもミーハーな気持ちが勝ってしまうのだ。
「雪野が答えたいように、答えればいい」
困っている奥様を見て、どこか諦めたように常務がそう言った。