雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「初めて会った時の印象は、”怖い人”だったと、思います」

言葉を選び、そしてどこか慎重に話す奥様。

「怖い人、ですか……。そうだったんですね。答えてくださって、ありがとうございます」

私の隣にいる広岡が、勝手にそんなことを言い出した。
何を勝手に終わらせようとしているんだ。

「常務のお話では、奥様に一目惚れだったということでしたが、どうして奥様は怖いなんて思ったんでしょうか」
「一目惚れ? そんなはずは……」

奥様は驚かれたように、思いっきり常務を見つめていた。

「あれって、一目惚れだったんですか?」
「奥様、今、知ったんですか?」

それもそれで驚きで。

「え……、じゃあ常務はどうやって奥様に好意を示したんですか? 怖がられていたなら伝わっていないことになります」

私はさらに質問を畳みかける。

「それは……」

常務はさらに困り果てる。

「まさか――」

ここで、読者さんが目をきらりと光らせて言葉を投げかけた。

「か弱い奥様をとっ捕まえて、”俺の女になれ”なんて言ったりしていないですよね……?」
「え? え? え? そんなシチュエーション、漫画やドラマ以外にあるんですか?!」

想像しただけで興奮して鼻血が出そうになる。私はおしぼりを鼻にあてて、それでも奥様の表情の揺れ一つも見逃さないとばかりに凝視した。

榊常務が、奥様を壁ドンとか――。

ギャーっ。私なら、一発で落ちる。その場でおちる。もう、その場であなたのものです。煮るなり焼くなりしてください――。

なんて、想像はしてみるけれど、まさか……。

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