雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

 その後、神原さんが席を外したすきに、奥様の隣へとちゃっかり座った。

「あの、ぜひ、奥様にお渡ししたいなって思っている物があって」
「広報誌以外にもですか?」
「はい!」

私、榊常務写真集をもう一つ作ったのだ。それは、奥様のため。

「アルバム……?」
「はい。インタビューの時に撮った写真です。全部を広報誌に使えたわけじゃないので。でも、奥様も、お仕事されている時の常務を見てみたいかなって思って」
「わぁ……ありがとうございます」

奥様が嬉しそうに笑う。

「これとか、奥様のお話をされている時ですよ? 本当に、仕事の時とは違う柔らかな表情で。我ながらいい写真かと」
「なんだか、そう言われると恥ずかしいけど、でも、凄く嬉しい。ありがとうございます。大事にします」

奥様が深々と私に頭を下げる。

「奥様、や、やめてください。私が勝手に作って来たんですから!」
「いえ。職場での創介さんを見ることは滅多にないから。そのお心遣いが本当に嬉しくて。それもこれも、皆さんが主人のことを慕ってくださっているからですよね。それが本当に嬉しいんです。ありがとうございます」

常務に迷惑をかけてしまいそうなことは躊躇い、
自分の思いなら躊躇うことなく口にする――。

そんな奥様の人柄にじんとした。
本当に、素敵な人だ。

仕事には恐ろしいほどに冷静で厳しいと言われる常務が、必死になったり焦ったりしてしまうほど惚れるのも分かる気がした。

「このアルバム、一生の宝物にします」
「奥様……」

感動に浸りながらも、聞きたいことは忘れない。

「私にだけ、こっそり教えてください」
「何、ですか?」

奥様の耳元に唇を寄せる。

「常務って、やっぱり、Sですよね?」
「えっ!」

私をまじまじと見つめる。そして、ぱっとまた赤くなる。

「――S、なのかもしれません」

小声でそっと教えてくれる。
はい、みなさん。榊常務はドSです。

 完全にみんな上機嫌。ただの酔っ払い集団になっていた。

ただ一人を除いて(笑)


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