雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「え……っ? 創介さん?」
俺の声に振り返った雪野が、大きく目を見開いている。その心底驚いたような視線が、俺の胸を貫く。
「どうして、ここに? お仕事に行ったんじゃ……」
瞬きも忘れたように俺をじっと見つめる雪野、そして――。
その隣に立つ男も立ち止まりこちらへと身体を向けた。
「……優太、君」
「お義兄さん――」
優太君――。
雪野の隣に立っていたのは、雪野の弟、優太君だった。
「優太君、だったのか……」
乱打していた胸の鼓動はまだおさまらないのに、全身から力が抜ける。
電話の相手も、この日会うつもりだったのも、弟の優太君だったのか――。
「今日も休日出勤だと聞いていたのですが、違ったんですか? 姉ちゃん、話が違うじゃん――」
「創介さん、仕事だって言うの、嘘だったんですか……っ?」
優太君を遮る雪野の声は、打って変わって厳しいものになる。
「あ、いや、それは――」
深い安堵も束の間、雪野の責めるような視線が痛い。はたまた俺は焦り出す。
「創介さん」
ここは平身低頭、謝るしかない。こんなところで、結局木村が言っていた通りに、頭を下げることになる。
エントランスで立ち話をしているわけにもいかない。どこか強張った背中の雪野の後に続き、俺たちのマンションの部屋へと戻った。
「――創介さん、説明してください。どういうことですか?」
ダイニングテーブルに雪野と向き合う。そして、成り行きで連れて来られてしまった優太君がいたたまれなさそうにソファに腰掛けていた。
ここは、すべてをありのままに説明するべきだろう。取り繕えば取り繕うほど、おそらく傷は深くなる。
「実は――」
心を決めて、口を開いた。