雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「ここのところ毎週土曜日の、雪野の様子が気になって。俺が仕事でいないとき、どうしているのか。特に寂しそうでもなく、むしろ楽しそうにも見えていたから」
こう口にしてみると本当に情けない。雪野のことになると、どうにも冷静な判断ができなくなる。
「そんな時だ。先週、雪野が誰かと電話で会話をしているのが聞こえてしまった。『今度の土曜、時間を取ってくれ』って、そう話しているのを聞いて、居ても立ってもいられなくなって――」
「それで今日、仕事に行くふりをして、私の行動を隠れて見ようと……」
雪野の目が俺を責める。それだけじゃない。その目は酷く哀しそうなもので――。
「私が、創介さんを裏切るようなことをすると、思ったんですか……? 私に聞いてくれたらよかったのに、どうして」
「悪かった。この通りだ!」
考える前に深く頭を下げた。
「雪野を疑うようなことをしたくない。そんなことをして、雪野に失望されたくなかった。だから、ただ一目見て、安心したかっただけなんだ。本当にごめん。許してくれ」
頭を下げ続けている中、雪野はただ黙ったままで。その心の怒りを感じる。
俺は、また間違えてしまった――。
「――深刻そうなところ、ホント、申し訳ないんだけど……」
そんな時、何かを堪えるような優太君の声がした。
「第三者が聞いていると、もう、勝手にやってくれ――じゃなくて、ただお互いに大好き過ぎて微笑ましさしか感じないというか、」
ゆっくりと顔を上げ優太君に視線を向けると、懸命に苦笑を堪えていた。
「姉ちゃんも分かってあげなよ。お義兄さんは、ただ心配でたまらなかったんだ。妻の心がどこかに行ってしまうんじゃないかって。そう誤解させるような行動もしたんだろ」
「毎週、会っていたのも優太だし、電話の相手も優太です」
雪野が反論するように声を上げた。
「だから。それは、お義兄さんには分からなかったわけだし」
そう言いながらも、まだ優太君は笑いをこらえている。
「お義兄さん。なんの心配もいらないです。そもそも、姉ちゃんは男から見てそんなに目を引くような女でもないですよ。お義兄さんだけが、特別に見えるだけなんです。それに、姉ちゃんが陰でこそこそしていたのも全部、お義兄さんのためなんですから――」
「ちょ、ちょっと優太!」
優太君の言葉を慌てたように雪野が遮った。