雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「いいだろ? 全部、本当のことを話してあげたら? お義兄さんのためにとやっていることが、逆に苦しめているなら本末転倒だろ。それに、今日こうやってバレてしまったわけだし」
「俺の、ため……?」

訳が分からないまま、雪野と優太君を交互に見る。

「……今月に入って、創介さんが毎週土曜日、仕事になって。だから、その間に車の運転の練習をしておきたかったんです」

雪野が俯きがちに、ぽつりと口を開き始めた。

「免許取り立てだから、創介さんを隣に乗せるのに上手くなっておきたかったの。それで、来月の創介さんの誕生日に、私の運転で遠出をしようって計画していて。驚かせたかったんです……」

誕生日……?

「そうなんですよ。お義兄さんの誕生日を祝うために、姉ちゃんが行先から宿泊先まで全部決めて。その宿泊先まで、姉ちゃんの運転で何度往復させられたか分かりません。おかげで、俺の土曜日は丸つぶれですよ」
「ゆ、きの……」

俯く雪野を見つめる。

「せっかくのサプライズだったのに。もう、全部、バレちゃいました」

その心底がっかりしたような声に、眩暈がする。そう、自分に馬鹿さ加減に。

「俺は、一体、何をやっていたんだ……」

項垂れる俺に、憐れむような声が掛けられた。

「お義兄さんは、本当に姉ちゃんのことが好きなんですねぇ。不安になったり落ち込んだり、そんな風に心底申し訳ないと思ったり。一人の人間にそこまで感情揺さぶられるってなかなかないですよ」

憐れむような、どこか呆れているような。

でも、事実だから仕方ない。雪野のことだけは、天にも登るし地獄にも落ちる。

「雪野、ごめん。勝手な想像をして、雪野を傷付けるようなことをして」
「う、ううん。私の方こそ、ごめんなさい。それだけ、創介さんを不安にさせるような行動しちゃっていたんだよね。ごめんなさい」

雪野も頭を下げるから、慌ててそれを制止する。

「いや、今回のことは完全に俺が悪い。俺がいちいち不安になったりせずに、雪野に聞けば良かったんだ。信じていないわけじゃないのに、どうにも臆病になる。全部、俺が悪い」
「いえ、私が――」
「すみませんけど」

俺と雪野が言い合っているところに、咳払いと共に優太君の声が入り込んで来た。

「俺、そろそろ帰ってもいいですか? あとは、お二人でいくらでも愛を確かめあってください」
「あ、ああ、ごめん」

今度は、明らかに呆れたような表情で優太君が立っていた。

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