雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
車に乗って、10分後――。
「お、おいっ、車線変更で減速するな。危ないだろ!」
「す、すみません!」
全然安心して座ってなんかいられなかった。
初心者の運転にそんなに期待していたわけではないが、それでも毎週優太君と運転していたのではないか。
「ハンドルはそんなにきつく握らない方がいい。動きが荒くなる」
「はい……っ」
「なるべく、視線は遠くに」
「はい」
心なしかこの車は蛇行運転をしている。
「……っ」
赤信号で停車したのはいいが、ブレーキが急すぎる。つい身を乗り出してしまった。
「――優太君に心から同情するよ」
「え?」
「いや」
肩を上下させながら、これから戦闘にでも向かうかのような雪野の雰囲気に、俺も心して同乗することにする。
なんとか高速道に入っても――。
「ゆ、雪野っ。ここは中央道だぞ。一般道じゃない。もっとスピードを出せ」
「で、でも、まだ怖くて」
「遅い方が危ないんだ!」
時速80㎞にも満たない。周囲の車との調和も取れない。
「一般道より、高速の方が運転は楽なんだ。歩行者もない、交差点もない、信号もない。ただ一定の速度で左側を走ればいい。そう思えば、気が楽になるだろう?」
額から汗まで流れている雪野になだめるように言う。
「そ、そっか。そうですね。そう考えればいいんだ」
「そうだ。もっと、リラックスして」
「ごめんなさい。あまり話し掛けないで。運転に集中できなくて怖いの」
そんなこと言われたら、隣に乗っている俺の方がずっと怖い。
「ああ、分かった。とにかく、力を抜いて」
俺も腹を括る。雪野となら、どうにでもなれだ。