雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――創介さん、お肉を焼くのが上手!」
「そうか?」
バーベキュー用のグリルを二人で囲み、肉や野菜を焼く。
「はい! 裏返すタイミングもばっちりです。だいたいみんな、じっとしていられなくて何度も裏返したりしちゃうんですよ。それに……お肉を焼く姿が、すごくさまになってる! かっこいいです」
雪野がきらきらとした目で俺を見るものだから、ついついその気になる。
「肉は俺に任せろ」
「じゃあ、任せちゃいますね。助かります」
髪を一つに結び目を弓なりにした笑みが、いちいち可愛い。それに、おだてるのが上手い。俺は既に一流料理人の気分だ。雪野みたいな新人教育係がいたら、皆、持っている以上の能力を発揮しそうだ。
――でも。絶対、そんなことさせないが。
「私はお酒の準備と、それから……」
雪野は雪野で、持って来た荷物を覗きながらごそごそとしている。
5月の山中湖はまだ少しひんやりとする。でも、新緑が気持ちいい。静かな湖面も澄んだ空気も最高だ。こうして、二人だけで自然に囲まれて過ごすのもいいものだ。
ある程度焼き上げた後、湖の方を見ながら椅子を二つ並べる。
「乾杯」
缶ビールを合わせる。そして、肉を口にした。
「美味しい。いい焼き加減ですよ。やっぱり、上手です」
「そんなに褒めるな。調子にのるぞ」
「調子にのっていいですよ」
アウトドア用の椅子に並んで座る雪野を見る。
「だって、最高の旦那様ですから」
――ったく。
俺を意識して煽っているのか。
俺の奥さんは、困ったものだ。
「今日は、なんだ。誕生日だから、リップサービスか?」
「ううん。本心。ただ、いつもより思ったことをそのまま言葉にしているだけです」
ふふ、と笑う雪野を見て心から幸せだと思う。
二人で、こうして過ごす時間が何より心を満たし幸せをくれる。