雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「そ、創介さん、ケーキ、食べませんか?」
その指をそのまま頬に残していると頬を赤くして、焦ったように皿を手にした。
「そうだな。せっかく雪野が作ったケーキだ。ちゃんと味わうよ……だから、」
ここは素直に引き下がる――と見せて。
「一口目は、雪野が食べさせてくれ」
「……えっ?」
今度は目を丸くする。
「一口目だけでいい。それくらい、いいだろう? 今日は俺の誕生日だぞ」
祝われる側の人間としての立場を大いに使わせてもらう。今日は、多少のことならこのセリフで許してもらえそうだ。
「……は、はい。じゃあ、一口だけ」
やっぱり。
丁寧に切り分けてくれたケーキを皿に載せ、雪野が隣に座る。フォークで一口サイズにして、俺の口へと運びながら、雪野がぶつぶつと呟いた。
「こんな姿、創介さんの会社の方が見たら、どう思うかな。びっくりすると思いますよ?」
「ここには会社の人間なんていない。それに――」
フォークを手にした雪野の手を掴む。
「いたところで、困りもしない。もう、社内報で俺が妻を溺愛しているということが社員皆に知れ渡ってしまっているからな。おまえも読んだだろう?」
「そ、それは……っ」
昨年末の社内の広報誌で、俺のインタビュー記事が掲載され。俺も俺で、ついつい口を滑らせてしまった。
『妻が趣味みたいなものだ』
なんて、少し冷静になれば口が裂けても公の場で言うとは思えないようなことまで口にしていた。それもこれも、あのインタビュアーのせいだ。
まあ、全部事実だから仕方ないのだが――。
「ほら、早く」
その手首を引き寄せる。