雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「心配したんだろう? 神原に目が行くんじゃないかって。雪野が他の女のことで心配してくれたのなんて、初めてのことだな。女の嫉妬なんて見苦しいと思っていたけど、おまえにされるのはたまらなく楽しい」
「そんなっ!」
「仕方ない。雪野が可愛いことを言うから悪いんだ。あんな、意味不明な嫉妬の仕方があるか」
「もう、さっきの言葉は忘れてください!」
創介さんの胸を叩く。でも、その手を創介さんの手のひらが包み込むようにして止めた。
「――てっきり、俺があまりに求め過ぎて、雪野がうんざりしているんじゃないかと心配になったんだぞ? そんなところに、おまえにあんなこと言われたら、余計に嬉しくて」
私が、拒んだように思ってしまったということ――?
思わず創介さんの胸から顔を上げると、少しだけ歪んだ笑みがそこにあった。
「俺は、雪野が思っている以上におまえに惚れてるんだ。そのうち、雪野を困らせてしまうかもしれない。俺も不安だよ。雪野に嫌われたらどうしようかって」
「そんなこと、あるわけないです!」
「今はそうかもしれないけど、そのうち俺に愛想を尽かすかもしれないだろ? 俺はおまえのことになると見境がなくなるからな」
創介さんが私をきつく抱きしめた。
「――だから、おまえも無理はしないでくれ」
創介さんの腕に力が込められる。
「何よりも雪野が大事だから」
創介さん……。
「雪野の心が離れてしまうことが、何より怖い」
きつく抱きしめられた腕の中で私は激しく頭を横に振った。
「何か不安なこと嫌なことがあったら、すぐ俺に伝えてくれ。雪野に少しの苦しみも与えたくない。全部、俺の手で解消していきたいんだ」
こんなに愛してもらえているのに、私は自分を信じられないのだろうか。何に怯え、何を怖いと思っているのか。
「雪野の口から出る言葉なら、どんなものでも可愛いと思う」
「そんなこと――」
「そうなんだよ。それほど、おまえに狂ってるってことだ」
今日の創介さんはいつにも増して言葉がストレートだ。
それはきっと、私があんなことを言ったから。私の不安を全部取り除こうとしてくれてる。
「雪野と出会って五年経っても変わらないんだ。もう、これは中毒だな。一生抜け出せない中毒だ。雪野中毒」
「創介さん……」
「抜け出したくない中毒だ」
そんな優しいことばかり言って、私を甘やかしてくれる。
「雪野」
真剣になった声が頭上から降って来る。
「俺の目に映るのは、おまえだけだ」
「創介さん、ありがとう」
愛してくれてありがとう――。
その胸に顔を埋める。
この匂いも、肌も、愛おしくてたまらない。
この人を守るためなら、何だってしてみせる。