雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「それとすぐに分かるようなブランドものや、派手さのある服は避けた方が無難よ。とにかく、落ち着いていて質のいいもの。服も装飾品もね。幹部の奥様たちの集まりや創介君の仕事関係はだいたい年配の人たちだしね。でも、雪野さんは若いんだからその若さは出していこう」
どこか楽しそうに、私にいろいろと教えてくれた。
「まずは普段着ね。デザインは、今、雪野さんが着ているようなものでもいいのよ。シンプルなニット、とてもいいと思う。でも、質にはこだわって。使っている糸や生地がいいもので、裁縫も仕立てもいいの。ぱっと見同じに見えても、着た姿は全然違ったりする」
「はい」
そう言って華織さんが出して来てくれた服は、どれも皆シンプルなのに、ちょっと見ただけでは分からないような場所に丁寧な装飾があったりと、素敵な服ばかりだった。
「主張しないところに気を使う。そういう服が品がある服だって思うのよ? それに、そういう服があなたにはとても似合うと思う」
私の肩に服を合わせながら、華織さんが微笑む。
それから、いろんなタイプの服を選んでくれた。
「――とりあえず、こういうものを選んでおけば間違いはないっていう基本のものだから。雪野さんが慣れて行けば、自分の好きなものを知るようになると思うよ」
「本当に助かりました。服装についてい深く考えたことなんてなくて。でも、これからは自分だけの問題ではなくなるので」
華織さんが、少し真剣な顔をして私を見つめた。
「そうね。特に、あなたはこれから、たくさんの人の視線にさらされると思う。創介君のためにもいろんなことを考えなくちゃね。この世界にはいろんな人がいるし……。でも、自分の良さもちゃんと認識するのよ? 服装なんてどうにでもなるんだから」
「ありがとうございます」
華織さんは私のために、自分の店では置いていない物の買い物にも付き合ってくれた。
この日買ったものどれもが、いつも買う物の何倍もの値段がして不安になる。
私の給料とこれまでの貯金を合わせればなんとかなるだろうか――。
慌てて頭の中で預金通帳と毎月の給与の額をはじき出す。
「たくさん買ったわね。創介君に甘えるのよ? これも全部、彼のためなんだし」
にこっと笑う華織さんを見て、思わずまじまじと見返してしまった。
「創介さんに――」
「そりゃあそうでしょう? 旦那様なんだから。そういうところ、遠慮してる場合じゃないよ」
考え込む私を見て、華織さんが耳打ちした。
「天下の榊創介は、お金なんて掃いて捨てるほど持ってるはずだよ? 何より、好きな女には甘えてもらいたいものなんだから」
華織さんが私の肩をポンポンと叩く。