雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


 たくさんの紙袋を抱えて自宅マンションに帰宅した。

 広い玄関を抜けて、寝室へと向かう。そこの一角に備え付けられたウォークインクローゼットが私専用のもの。空間だらけのそこに、紙袋を置いた。

 反対側の壁一面のクローゼットには、創介さんのスーツがずらりと並んでいる。

 買って来たものを、一つ一つ袋から出しハンガーにかけて行く。当面はこれでなんとかなるだろう。

 この日の出費の総額は考えていた以上に高額で、思わずため息をついてしまった。確かに、華織さんの言う通り、ここで無理しても続かない。

創介さんにも少し助けてもらった方がいいかもしれない――。

「ただいま――あれ、雪野、いないのか?」

創介さん――!

玄関の方から創介さんの声がして、大事なことを思い出した。

買い物に夢中で、夕飯を準備していない――。

慌ててクローゼットから飛び出そうとしたところに、創介さんの身体が現れて思わず後ずさった。

「なんだ、こんなところにいたのか」

スーツ姿の創介さんが私に微笑みかけると、すぐにその視線が紙袋へと移った。

「買い物したのか?」
「はい……それで、夕飯の準備をまだしていなくて」
「じゃあ、今日は、外で食べよう」

それからすぐに創介さんに連れられて、近くのレストランへと来た。


「――今日は、ごめんなさい」
「たまには外で食べるのもいいだろう?」

向かいに座る創介さんが笑ってくれるから、余計にいたたまれなくなる。

「いいから、早く食べろよ。結構、美味いぞ」
「はい。いただきます」

口にした料理は、本当に美味しかった。

「仕事は、最近どうだ? 落ち着いたか?」

すぐに家を出て来たから、目の前にいる創介さんはスーツ姿のままだ。いつ見ても、私の旦那様はスーツ姿が凛々しい。

パリっとした仕立てのいいスーツに手首には男の人らしい大きめの腕時計。そして指には結婚指輪がはめられている。その指輪を見ると、私はいつも胸の奥がじんとする。

「はい。でも、今、児童施設の建設で、近隣住民の理解を得るのに苦戦してます」
「近隣住民の理解か。それは、どんな事業でも一番大事な仕事だな」
「主に交渉に当たってるのは上司なんですけど、私も補佐として細かな疑問点なんかには答えなくちゃいけなくて。施設を利用する子供達のためにも、近隣住民の理解は絶対必要です。三年目の私のしていることなんて、ほんとに小さいことなんですけど、誠実に答えたいって思ってます」
「どんな大きな事業だって、全て小さなことの積み重ねで成り立ってるんだ。雪野のやってることも立派な仕事だよ」

そうやって、私の仕事のこともきちんと認めてくれる。

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