雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
食後のコーヒーが出て来た頃に、この日の買い物のことについて切り出した。
「お願いがあるんですけど……」
「ん? どうした、改まって」
「今日、いくつか服やバッグを揃えたんです。華織さんに見立ててもらって」
「華織さん? そうか、それであの紙袋……。で、お願いって?」
手にしていたコーヒーカップを置き、創介さんが私を見つめ返す。
「結構、かかってしまって。それで――」
「ああ、そんなことか。いくらしたんだ? 百万で足りる?」
「ひ――い、いえ。そんなにはしていません。それに、少しは私も出せますから」
慌てて手を振る。
「バカだな。おまえのための物だろ? 俺の金を使えばいい。俺の妻なんだからそんなことで遠慮するな。これからも、欲しいものや必要なものはちゃんと言えよ」
創介さんは何でもないことのようにそう言う。
「ありがとうございます」
「俺も、おまえに話があるんだ」
お礼を言うと、今度は創介さんが少し言いづらそうに口を開いた。
「来月、出張になった。少し長期になる」
長期出張――。
思わず顔が曇ってしまいそうになって、咄嗟に表情を作る。
「分かりました。どちらに?」
「タイだ」
「タイ……、いつか、創介さんがお土産を買って来てくれましたね。期間はどれくらいですか?」
寂しい――。
その感情が私の意思に反して心を埋め尽くそうとするから、敢えて明るい声を出した。
「三週間くらいだ。悪いな、家に一人にして」
「いえ! 仕事なんですから。家のことは任せておいて」
「常務と言えども、現場との距離は近くて。本社との違いだな」
三週間――。
それは途方もなく長い時間のように思えた。