雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「ビーフシチューは、作ってくれたの、初めてだったか?」

ダイニングテーブルで向かい合って座る創介さんが、スプーンを口に運びながら私に問い掛けた。

「そうだったかな。どうですか?」

今は、リビングダイニングには私たちの声しかしない。

「美味いよ。ちょうどいい味の濃さだ」
「良かった」

目の前にいる創介さんの表情がいつもより優しく感じるから、少し胸が苦しい。そんな風に思うなんて、どうかしている。

「――明日から三週間も雪野に会えないからな。急いで仕事を切り上げていたら、神原に『愛妻家ですね』と言われたよ。俺が雪野に会いたくて帰るのが、何故だかバレているみたいだ」

そう言って笑う創介さんに、何と答えたらよいのか分からず曖昧に微笑む。

「それにしても、本当に美味い。こんなもの前の晩に食べさせられたら、余計に出張なんて行きたくなくなるな」

私を目を細めて見てくれる。

私はただ、創介さんの愛情を受けているだけだ。

私も、少しでいいから何か――。

誰かと比べても仕方がない。私は私でしかないのに、今頃になってどうしようもないほどの焦りが私を覆いつくす。


 創介さんにとって、少しでも存在価値のある妻になりたい。

凛子さんのように大きな助けになれる力はなくても、何か――。

愚かな考えだと頭では分かっている。

創介さんの気持ちも、分かっているというのに。心に吹き付けて来る焦りが、私を心細く心許ない気持ちにさせる。

意味のない気負いが、私を押し潰そうとする。


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