雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「いえ、私たちはいいんです。ねえ、皆さん」
「はい。準備の時間のお喋りも、また楽しい時間ですから」

集まっていた奥様たちが顔を合わせて微笑んでいる。

事前に来て、
皆で準備をしていたということ――?

「初めまして。私、竹中(たけなか)と申します。よろしくお願いしますね」

固まる私の前に、奥様たちの中の一人が私の前に現れた。

「こ、こちらこそ、よろしくお願い致します」

竹中さん――本社の常務取締役の奥様だ。懸命に頭の中で名簿を手繰り寄せていると、まだ言葉は続いていた。

「榊さん、確か、お仕事されているんですよね?」
「え? あ、はいっ」

突然の話題に、困惑しつつも答える。

「それでお忙しいのかもしれませんが、こういう、ご自宅で行われる会合に時間通りにいらっしゃるというのはいかがなものかしら。栗林専務の奥様のご厚意でご自宅にご招待してもらえているんです。その準備を手伝おうと思うのが普通じゃないのかしら?」
「それは――」

何とか発した声は言葉にならない。

「私たち専業主婦の人間には働いている方のご苦労は分からないかもしれない。でも、三週間も前に案内が出されているんですから、今日一日くらい時間を空けられるんじゃないかしら?」

三週間前に、皆にはあの案内が出されていた。

それに、事前のお手伝い――。

栗林専務の奥様の言葉を鵜呑みにしてしまった自分を恥じた。

「気が回らず、大変申し訳ございませんでした。皆様、そして奥様、ご迷惑をおかけしました」

とにかく、何もしていない私の分をこの方たちにさせてしまったことには変わりない。すぐに頭を下げた。

「まあまあ、初めてだもの、しょうがないわ。こんなところで立っているのもなんですし、席に着きましょう」

栗林専務の奥様が、笑顔で皆を促す。

「本当に、奥様はお優しいわ。私も見習わないと。つい、小言を言いたくなってしまうんです」

いたたまれない気持ちのまま、手にしていた手土産を奥様に渡そうとしたら、すぐさまそれを違う人に遮られた。

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