雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「だめよ、そんなもの持って来ちゃ。この会は、出されるものもすべて決まっているの。勝手に手土産なんか持って来たら、参加者の中で差異が出来て余計に迷惑になります。申し訳ないけれど、それはそのままお持ち帰りになって」
栗林専務の奥様に気付かれる前に、小声でそう諭された。
「何も知らなくて、申し訳ありません」
「――皆さん、席に着きましょう?」
「は、はい! 今、行きますー」
栗林専務の奥様の声に、慌ててその人が答えた。
差し出した手を引っ込めて、自分の後ろにその紙袋を隠す。
私は、リビング横のサンルームに置かれた長テーブルの一番端の席に座った。
「では、皆さん、お集まりくださってありがとうございます。今日は、思いもよらず榊雪野さんが出席してくださいました。せっかく来てくださったので、この機会にぜひ、みなさん仲良くなりましょう」
そう言った奥様の言葉に、何か引っかかるものがあった。何か、含みのようなものがある気がする。
「じゃあ、雪野さん。初めてなので、少し自己紹介してもらえるかしら」
「はい」
席を立ち、テーブルにいる奥様達を見回す。奥様達が一斉に私を見る。
「現在、丸菱テクノロジーの常務取締役をしております榊創介の妻の雪野と申します。
先月結婚したばかりで、まだまだ至らないところも多いと思います。一から学ばせていただけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します」
深く頭を下げた。
――丸菱テクノロジーって、どこにあったかしら?
そんな囁き声が流れる。
私の視界に入る奥様達の目は、とても冷ややかで、流れる空気もどこか冷めていた。
腰を下ろしても、どこに視線を置いてよいのか分からずにいたらどこからともなく声が上がった。