雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「――それにしても、最近の若い方は、心が強くていらっしゃるのね」
それは、栗林専務の奥様の声だった。
「私、雪野さんが、こういう場に出ていらっしゃるのが心苦しいのではないかと思って、敢えて直前になって案内状を出したのよ。そうしたら、断りやすいでしょう?」
え――?
「なるほど……そうだったんですね。素晴らしいお心遣いです。でも、雪野さんにはそんなお心遣い必要なかったみたいですね」
竹中常務の奥様がそう言って私の顔を見る。
「普通ならいらっしゃれないはずですよね。榊家と結婚にまでこぎつけただけでも凄いことよ。それで十分じゃない。
私があなたの立場なら、人目に付かないようにするわ。宮川凛子さんとの縁談を壊してまで、それでもご自分の意思を押し通して結婚されたんですもの。社長の顔に泥を塗ったようなものでしょう?
それだけじゃない。丸菱グループ全体にとっても、どれだけの損失になったのか計り知れないっていうじゃない?」
竹中常務の奥様の言葉に、自分がこの場でどういう目で見られているのかをはっきりと悟った。
「――竹中さん、それくらいでいいじゃない。結婚は雪野さん一人の意思では決められないことですもの。社長の意思も社の利益もすべて無視して、ご自分の意思で結婚相手をお決めになるなんて、創介さんも男らしいわね。本当にあの方らしいわ。でも――」
栗林専務の奥様の声が低くなる。
「あなたはもう少し、ご自分の立場を考えた方がよろしいわ」
その顔に浮かんだ笑顔は、私の身体をさらに強張らせた。
「そして、本来その立場にいるはずだった人がいる、ということを」
――宮川凛子さん。
二度だけ目にした、その人の姿を思い出す。