雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
表参道という場所を知り尽くしているのか、路地を少し入ったところにあるカフェに連れて行かれた。
週末のカフェはどこも満席だと思ったのに、その店には運悪く空席があった。
「結婚して、この辺りに越して来たの?」
「うん、そう」
「それで、偶然会ったりしたんだ。私、表参道によく来るけど、あなたに会ったことなんてなかったし」
これからもこうして会ってしまうのだろうかと思うと、既に重い気持ちが立ち込めていた心がさらに重くなる。
「――それにしても、戸川さん。雰囲気変わったね。大学の頃と全然違う」
私をじっと、観察するように見ている。
「さすが、榊家の奥様だね」
そう言って、ユリさんは目を伏せた。
「ねえ、戸川さん――って、そっか、もう戸川さんじゃないんだ。榊さん、だね」
運ばれて来たカフェオレのカップを手にして、ユリさんが呟く。
そして、その伏せられていた顔を上げて私を強張った表情で見つめた。
「どうしたら、創介さんの奥さんになんてなれたの? ものすごく興味がある。あなたに会う機会があったら教えてもらおうと思ってたの。ねえ、教えて?」
口角だけが上がった笑みは、よりその表情の険しさを浮き上がらせる。