雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「なのに。蓋を開けてみたら、なぜかあなたが創介さんの奥さんになっていた。それを知った時、私、耳を疑った。まさかって。私もそう思ったんだから、創介さんを知っている人はみんなそう思ったはずよ」

この時間をひたすらに耐えていればいい。
そう思っているのに、心には息苦しさが込み上げて来る。ヒリヒリと込み上げて、苦しくなる。

「あなたが踏み台にした女の子たち、みんながあなたを見てる。その目がどんなものか、言わなくても分かるよね?」

いつだか、木村さんが言っていた。

『創介は君のこと仲間内にも隠しておきたいみたいだ』

きっと、こういう視線から私を守るためだったんだろう。

キャンパスで時折ユリさんを見かけた時に感じた微かな胸の軋み以外に、考えずに済んでいた。創介さんの過去は、事実として知ってはいても、それはただの事実でしかなかった。

「……それにしても、考えれば考えるほどに、あの宮川家のお嬢様を押しのけて創介さんと結婚したなんて凄いよ。創介さんと結婚するためにただじっと耐えて頑張ったんだね。尊敬するよ。あっぱれって感じ」

こんな風に言葉を投げつけられても、何も言えない。何か言葉を発することに意味なんてないのだ。

ユリさんは、ただ、その感情を私に吐き出したいだけ――。

頭では分かっていても、私にだって心はある。心は揺さぶられてしまう。

「――でも。戸川さんは、結婚出来てそれで満足かもしれないけど、周囲ではかなり評判悪いみたいだから。この世界、結構狭いの。みんながみんないろんなことを知ってる。私の耳にも入って来るくらいだし」
「評判って、それは、創介さんのこと?」

それだけは聞き逃せなくて、思わず口を開いてしまった。

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