雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
(まあ、簡単ではないけど、なんとかするよ。今回は俺が主導したプロジェクトだからな。本当なら現場に全部任せるべきなんだが、どうしても最後の詰めで難航して。俺の肩書でも何でも、役に立つなら差し出すさ)
プロジェクト進行中に、こちら側に不利になる条件で進められそうになって、創介さんが呼ばれてしまったのだと言っていた。
(うちは、売り上げも市場での規模も中途半端だ。少しでも市場拡大して利益が上がるシステムを作らないと成長は見込めない。なんとか、利益を上げる形を作っておきたいんだ。今回のプロジェクト、成功までなんとしても見届けたい)
今回の出張が、創介さんにとってどれだけ重要なものかが伝わって来る。
以前、仕事の話を聞いて不安を零してから、こうして創介さんは仕事のことを話してくれるようになった。
(ちゃんとこっちの会社でも実績作って、俺の奥さんを安心させてやらないとな)
そう冗談ぽく言って笑う創介さんに、私はまたも苦しくなった。
「私のことなんて、いいんです。創介さんは、創介さんの思うように仕事してください」
(俺はおまえがいるから頑張れるんだ)
私は目を閉じて、息をひそめる。心が敏感になって、どんな言葉にも感傷的になってしまう。
これが電話で良かった。表情は隠せる。
深呼吸をして口を開いた。
「……私も。私も、頑張るね」
創介さんが帰って来るまで、頑張るから。
だから、帰って来たら、目一杯抱きしめてください――。
その胸の中で優しく抱きしめてもらえる日を励みに、頑張るから。