悪役令嬢はクールな魔道師に弟子入り致します
 「それから、無理に覚えなくてもいい。リリーにしか出来ないこともある。料理、掃除、洗濯もお前に任せっきりだ。辛いならすぐに言えよ。リアムは最近お前に何でもやらせすぎなんだよ」

 セシルは私のことを心配そうに見てる。
 
 私は山羊のホットミルクにカカオの粉を入れたカフェオレもどきを作って、これも好評。今もふたりで飲んでいる。

 「うん。大丈夫。でもね、私今の生活がとっても楽しいの。色々教えてくれてありがとう。感謝してるの、セシルには……」

 セシルは私を見て、赤くなった。
 
 珍しい。夜は髪を下ろしているから漆黒の艶が映えて彼はとても神秘的に見える。女性だとしてもモテそうね。

 「そうだ。そのフード付きのマント、破れてたから繕っておいたわ。あと、ボタンも付け直した。何か他にもそういうものがあったら出しておいてくれたらやっておくね」

 セシルは私のことをじっと見ている。

 「ん?どうしたの?」

 「いや。何でもない。もう、遅い。寝よう」

 「そうね。じゃあ、おやすみなさい」

 私は右手にミルクを持って、部屋を出ようとした。
 すると、セシルが私の左手を引いた。

 「何?」

 「リリー。まだ……元の世界へ戻りたいのか?」

 「え?」

 「お前は役に立つし、いなくなると困る……かもしれん」

 もごもごと小さい声で言う。セシルが私を認めてくれた。正直とても嬉しかった。
 
 「セシル……ありがとう。よく考えてみるね」
 
 「ああ。ゆっくり考えろ。仕事は無理するなよ。おやすみ」
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