失恋タッグ
「どうかしましたか?」

朝比奈君は自分の手元を凝視する私に気づいて、首を傾げた。

「いや、別に。ただ美味しそうに食べるから見てただけよ。」

私は、誤魔化しながら慌てて彼の腕筋から、自分のハンバーグへと目を移した。


「食べたいなら、一口食べますか?」

すると朝比奈君はナイフで一口大に切ると、フォークに差して私に向かってそれを差し出した。

恋人でもあるまいし、それを、食べろと言うのか?

私は「いえ、結構です」思わず敬語になって顔を横にそむけた。


朝比奈君は「そうですか」と、仕方なくその肉をぱくりと食べた。

なんか、年下相手に完全に振り回されているような気がする...。
これでは先輩としての威厳がない。

「それで話って何よ?」

私は食べる手を止めて腕組みしながら、少し上から目線で問いかけた。

しかし、朝比奈君は「折角だから食べ終わってから話しましょう」と
言ってお肉を美味しそうに堪能している。

そう言われて私は「ぐッ」と言葉を詰まらせると、仕方なく食べ始めた。

完全に彼のペースだ。

さすが、元営業部のエースと言われていただけのことはある。
彼には若いにもかかわらず、どこか大人の余裕があるのだ。
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