3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「……あの女性は婚約者だったんだね。しかも、とんだ性癖の持ち主だったとは。……けど、それよりも東郷様は君を優先して下さったって事なんだよね?」
粗方事情を説明し終わった後、瀬名さんは軽いショックを受けてから最後に告げた言葉に、私は全身の熱が上昇し始める。
「そ、そんな、優先だなんて。あの時泣いてしまったので、呆れられているだけですよ」
平静を装いたいけど、動揺している姿はどうにも誤魔化すことが出来ず、私はバツが悪くなって視線を明後日の方向へと向けた。
すると、タイミングがいいのか悪いのか。
料理が順次出始めてきたので、私達は一先ず会話を中断し、食事を堪能することにした。
「このサーモンマリネ厚くて甘味があって美味しいですね」
「このカボチャのポタージュも素材の旨さが凝縮されてて美味しいよ」
まるでグルメリポーターにでもなったような気分になって、それぞれ出てきた料理の感想を伝え合いながら会話に再び花が咲く。
おそらく、私は瀬名さんと気が合うのでしょう。
始めこそ緊張してしまったけど、話していると楽しいし、会話も結構長く続く。
確かに出会った当初から似たようなタイプだなと薄々感じていたけど、話していく内にそれが確信へと変わっていく。
その度に嬉しくなり、私の中ではもっと瀬名さんと会話をしたいという欲求が膨れ上がっていくばかりだった。
それからお待ちかねのメインディッシュが配られ、用意して頂いた取り分け用のお皿に瀬名さんはパスタとピザを分けて下さり、その細やかな気配りと優しさには毎回圧倒されてしまう。
この方の恋人になれたらどれだけ幸せになれるだろうか。
きっと、とても大切に愛してくださるのでしょう。
私も、もし瀬名さんが恋人になって下さるのであれば、一生大切に愛していきたい。
……なんて、そんな風に想われていることを知ったら、この方はどんな反応をするのでしょうか。
困ってしまうのか。それとも、喜んで下さるのか。
それは、口にしてみないとずっと分からないままなのかもしれない。
今まで恋愛事情には全く無縁だった私が、ここまで話せるのはきっと瀬名さんだからなのでしょう。
そんな気持ちをお伝えしたら、きっとどっちに転んでも今のこの関係性は変わってしまう。
けど瀬名さんとそれ以上のことを望むのであれば、それを受け入れる勇気を私は持つべきなのではないのでしょうか……。