3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
◇◇◇



———あれから、数時間後。


あくせく動き回っていたら、何だかんだであっという間に宴会終了時間を迎え、私はどっと押し寄せてくる疲労感に、肩の力が一気に抜け落ちる。

そして、最後の締めの挨拶も終わり、ぞろぞろと会場から人が流れ始めて行く中、私は楓様の元へ戻るために東郷家のテーブルへと小走りで向かっている途中だった。

「……あ」

丁度こちらに向かってくる楓様と泉様に鉢合い、私はその場で足を止める。

「特に用はないから。お前は持ち場に戻れ」

そう突き放すように楓様は冷たく仰ると、泉様に腕を抱かれたまま私の横を素通りした。

すれ違いざま、泉様から不敵な笑みを向けられ、私はその表情を見て心にぐさりと矢が突き刺さったような鋭い痛みが走る。


……おそらく、これからお二人はあのお部屋で……。


楓様の一言と、あの泉様の勝ち誇った顔を見ればどんな事をするのか大体想像がつく。

確かに、今日は東郷家一族が揃う場でもあるし、泉様もいらっしゃるのであれば、そのままその流れになるのは全く可笑しな話ではない。

もしかしたら、楓様が今日ご宿泊するのも、その意図があっての事なのかもしれない……。


そう思う程に、比例して苦しみが増していく自分の心。

こうなることは始めから分かっているのに、楓様を好きになってしまったのだから、この苦しみを受けるのは自業自得だ。


そう自分に言い聞かせ、私は零れ落ちそうになる涙を何とか堪えると、兎に角気を紛らわす為に、今度は宴会場の片付けに徹しようと、来た道を引き返す。
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