3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
それから、部屋へと続く奥のエレベータ前に到着すると、そこには重厚なガラス扉が設置され、楓様が前に立つと顔認証システムなのか扉が勝手に開き、私達とコンシェルジュの男性はそのまま入口を通過した。

そして、エレベーターを呼ぶには指紋認証が必要らしく、楓様は脇にある操作盤に人差し指をかざすと機械が反応し、エレベーターが動き始める。

もはや鍵という概念はなく、その完備された最新システムに私はまたもや終始圧倒されてしまう。

暫くエレベーターを待っている間、直ぐ側にタワーマンションの階層案内板があったので何気なく目を通してみたら、その内容に開いた口が塞がらなかった。

二階〜三階は共有設備エリアらしく、スパ付きのフィットネスジムがあったり、各階には会議室やシアタールームがある他、最上階にはビューラウンジ、温水プール、リラクゼーションルームやバーラウンジなど。

もはやマンションというよりは正しくホテルそのもので、あまりにも住む世界が違い過ぎて、私は隣に立つ楓様を敬畏の眼差しで見上げた。

そんなこんなでエレベーターは直ぐに到着し、私達はそれに乗り込むと、一体何階にお住まいなのか気になりながらどんどん上層部へと上がっていく数字を眺めていると、何だか今自分が思っていることは愚問な気がしてきた。

それを決定付けるように、エレベーターは最上階で止まり、これまたホテルさながらの赤い絨毯が敷き詰められ、空調管理された閑静な通路を歩くと、楓様は突き当たりにある部屋の前で立ち止まった。

最上階の角部屋……。
やはり最高級クラスのお部屋にお住まいだったんですね……。

何となく予想はしていたけど、的中したらそれはそれで意味もなく体が震えてくる。

そんな私には全く気付いていない様子の楓様は、私の手を握ったまま扉脇に設置された、これまた指紋認証タイプのドアロックを解除させると、扉を開けて部屋の中へと入る。

それから私達は広い玄関先でカートに積まれた荷物を全てそこで下ろすと、コンシェルジュの男性は一礼してから部屋を出て行ったのだった。


ようやく一息ついた私は、ついに楓様のプライベート空間に踏み入ってしまったことに段々と心拍数が上がり始めていき、とりあえず気持ちを落ち着かせるために小さく深呼吸する。

そして、改めて玄関に目を向けると、そこにはインテリアの類が何もなく、靴も置いてなく、何とも殺風景な光景だった。

「とりあえず、この荷物中に入れるか」

すると、楓様は調理器具の箱をいくつか積み上げてから、それを抱えてさっさと部屋の奥へと進んで行ってしまったので、私も慌てて持てる分だけの荷物を持ち、ひとまず誰もいない玄関先で「お邪魔します」と一言挨拶をしてから楓様の後に続く。
< 201 / 327 >

この作品をシェア

pagetop