らんらんたるひとびと。~国内旅編~
 ある日、首都から物凄いイケメンがやって来て。
 町から女性が消えた。

 後に、この大きな町に伝説が出来たことを知るのは。
 旅が終わった後の出来事だ。
 私はずっと背を向けてピアノを弾き続けていたから、気づかなかったけど。
 一日中、店は満席で。
 外には長蛇の列が出来て。
 噂を聞きつけた人達が、鈴様の顔を拝もうとやって来たそうだ。
 鈴様は、給仕の仕事はせず店内をうろうろするだけだし、
 恐らく失礼なことを言っていた気がするけど。
 怒り出す客は一人もいなかったそうだ。
 営業時間は18時までだったけど、1時間延長して。
 19時に無理矢理閉店した。

「いやあ。皆さんのお陰で一年分稼がせてもらったよー」
 と、ほくほく顔をするのは、店長だ。
 さすがにくたびれたのか。
 皆、椅子に座ってテーブルに突っ伏している。
 シナモンだけ、立ってニコニコとしていた。
「ジェイくんとスズくん。騎士団なんてやめてウチで働かない?」
 多分、軽いノリで店長が言ったのだろうけど。
 ジェイと鈴様は怖い顔をして、
「断る!」
 と、ハモって言った。

 外は真っ暗で。
 働いたなあという充実感がそこにあった。
「これさ、少ないけど。何かの足しにしてね」
 申し訳なさそうに、店長が鈴様とジェイの2人に封筒を渡した。
 封筒に入っていたのは紙幣1枚で。
 てっきり無償で働くのだとばかり思っていたので驚く。
 でも、なんで2人にだけ渡しているのか…。
「てんちょー。おいらたちも働いたんだけど!」
 白雪姫が言うと。
「いや、全員分を代表して2人に渡したんだ。イケメンに乾杯!」
 店長が白雪姫にウインクして言った。
 ぞっと背筋が寒くなる。
「あの、いいんですか。お金もらっちゃって」
 ジェイが疲れた表情で言うのを白雪姫が、
「じゃあ、おいらが貰うからな!」
 と言って手に持っていたお金を奪おうとしたので。
 私とジェイは問答無用で白雪姫のお尻に蹴りを入れた。

「この私が稼いだお金か…少ないな」

 相変わらずな鈴様の物の言いようにカチンときたが。
 お金を眺める鈴様の目はどこか誇らしげな気がした。
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