転生アラサー腐女子はモブですから!?
 昔から卒なく何でもこなしてきたダニエルだったが、王太子殿下と共に学ぶ勉強会は、必死に予習復習をやったとしても、食らいついて行くのが困難なほど、高度な内容だった。到底六歳の子供が理解出来るものではなく、今考えると側近候補をふるいにかける目的で一緒に学ばせていたのだろうと思う。

 あまりの難しさに次々と側近候補がいなくなる中、最後まで残ったのがダニエルとリアムだった。

 必死にくらいつくダニエルと違い、リアムの態度は飄々(ひょうひょう)としたもので、遅刻はしてくるは、講師が教鞭を取っていようともお構いなしに居眠りをしたりと、真面目に参加することはなかった。

 それなのに、不真面目なリアムの態度に腹を立てた講師が難問を出すが、簡単に解いてしまう。その上、さらに難しい質問を講師に投げかけ困らせることも度々。

 アイツこそ本当の天才だった。

 あの当時は、そんなリアムに嫉妬し、努力しても、努力しても追いつけない現状に腐っていた。

 何に対しても投げやりになり、必死に食らいついていた勉学ですら投げ出し、次第に王城からも遠ざかっていった。

 毎日のように、戯れに絡んでくるメイドと遊び、体たらくな日々。そんな時、アイシャが書庫にこもっているという話をメイドから聞いたのだ。

 三歳の子供が書庫にこもって本など読むものかと、半信半疑で書庫へ行ってみれば、分厚い辞書片手に本を読んでいるアイシャを見つけた。

 あの姿は衝撃だった。

 たった三歳の子供が机にかじりつき、辞書片手に本を読んでいるのだ。大きな辞書は彼女が扱うにはあまりにも大きく、苦労してページをめくる姿は違和感の塊だった。

 何の本を読んでいるのか気になったダニエルは、そっとアイシャへと近づき、さらに驚くこととなる。アイシャが読んでいたのは、この国の歴史書だったのだ。

 受けた衝撃のまま、思わず声をかけていた。

『何故歴史書を読んでいるのか』と。

 あれが、アイシャと初めて会話をした記念すべき言葉になったわけだが、恥ずかしい話、それまでのダニエルは三歳離れた妹のアイシャを疎ましく思っていたのだ。
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