転生アラサー腐女子はモブですから!?
「父上にお話があります」

 いつにない、リアムの真剣な眼差しに、鋭い視線を投げていた父の片眉がわずかに上がる。

「なんだ、やっと騎士団をやめると言う気になったか」

「いいえ、騎士団を辞めるつもりはありません。しかし、それでは父上も納得されないでしょう。騎士団をやめない代わりに、父上の望み通り次期宰相になれるよう努力致します。必ずやウェスト侯爵家の知の名門の名に恥じぬ業績を遺してみせましょう」

「ほぉ〜、騎士団に所属しつつ、他者よりも豊富な知識を身につけ、頂点に立つと。並大抵の努力では、なせぬな。それでも、両立させて見せると言うか?」

「えぇ。やる前から諦めるのは性に合わないので。
かつて神童と呼ばれた私の実力、とくとお見せ致しますよ」

 父の目を見て、ニッと笑って見せる。そんなリアムの笑みを見た父が、一瞬、驚いた表情を見せた後、口元にわずかな笑みを浮かべた。

「――――あぁ、わかった。好きにすればいい。但し、両立出来ないと判断した時点で騎士団は辞めてもらう。よいな?」

「わかりました」

 アイシャの言葉が父上に立ち向かう勇気をくれた。一歩前に進む力を。

 父の執務室を退室し私室へ向かいながら、リアムは心の中でアイシャへ感謝の気持ちを呟いた。





「やっとリアムも本気になったようだ。どんな心境の変化があったものやら? 人間好きな物ほど禁止されると刃向かいたくなるものか。ナイトレイ侯爵もたまには良いことを言うではないか」

 ひとり祝杯をあげるウェスト侯爵のご機嫌な鼻歌が執務室にいつまでも響いていたことを、リアムは知らない。そして、父の手のひらの上で転がされていたなんてことも。
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