転生アラサー腐女子はモブですから!?

貴族としての責任

 剣の稽古をつけて欲しいと、師匠に直談判してから十年。アイシャは、もうすぐ十七歳になろうとしていた。

 師匠から受ける一週間に一度の特訓とは別に、リアムからは短剣の扱いを習う。そんな生活を数年も続けていれば、騎士団の練習生くらいとは互角にやり合えるまでには成長した。しかし、それが限界だった。

 いまだに、キースに剣を当てることすら出来ない。

 連敗記録を更新中のアイシャだったが、騎士団に所属はしていないながらも、騎士団本丸で噂になっていたらしい。

 そんな中、知り合えた第三の師匠。騎士団所属の女騎士であるお姉様方に、キースにコテンパンに叩きのめされたアイシャは、今日も宿舎にある通称『女の花園』、談話室にて彼女達になぐさめられていた。

「今日のアイシャは惜しかったと思うわぁ。身体を反転させてキースの懐に入った時は、もしかしたらって思ったもの」

「そうねぇ、持っていた剣が長剣ではなくて短剣だったら一撃入れられていたかもね」

「あのキースの驚いた顔見た? アイシャに懐に入られて目を丸くしてたわよ!」

 頭上で交わされる三人の騎士服を着た麗しきお姉様方の会話に癒される。

 ひとりのお姉様の膝の上でエグエグ泣いていたアイシャは、ここぞとばかりに目の前の豊満なお胸に顔を突っ込み堪能する。

(柔らかい……、あぁぁぁ、男装の麗人。新たな趣味が花開きそうだわぁぁぁ)


「それにしても不思議よね。人当たりの良いキースが女子相手に本気で剣を振るうなんて。周りから見ても、明らかにキースはアイシャを目の敵にしているわよね。貴方、キースに何かしたの?」

「………ひっく…ひっく………、な、なにも…じで…まぜん………」

 泣きながら、豊満なお胸を堪能していたアイシャに、お姉様方が不思議そうに問いかける。

(なぜ、あんなに目の敵にされるのか、私が知りたいくらいよ)

「そうなの? もしかしたら、思春期特有の好きな女の子を虐めたい、男の子心理ってやつかしらぁ~?」

(イヤイヤイヤイヤ、絶対それはないだろう!!)

 キースの殺気のこもった目は、好きな相手に向けられるものではない。まぁ、殺したいほど好きな相手には向けられることもありそうだが、そんなヤンデレこっちから願い下げだ。

 考えることを早々に放棄したアイシャは、全力で目の前のお胸を堪能する。そして、頭を撫でるお姉様の優しい手に癒されたアイシャは、女子会を満足するまで堪能し、やっと帰路についた。


< 50 / 281 >

この作品をシェア

pagetop